ONNXとは?
オープン・ニューラル・ネットワーク・エクスチェンジ(ONNX)は、さまざまなプラットフォームやツール間で機械学習モデルの交換性を促進するために作成されたオープンソースフォーマットです。FacebookとMicrosoftの協力によって生まれ、2017年9月に正式に発表されました。ONNXは異なる機械学習フレームワーク間の橋渡しとなり、モデルを再構築や再学習せずに移植できます。この標準化は、さまざまな環境でのモデル展開をより効率的で柔軟にします。
ONNXの主な特徴
- 相互運用性: ONNXは主にTensorFlow、PyTorch、Caffe2、Microsoft Cognitive Toolkit(CNTK)など、主要な機械学習フレームワーク間でシームレスなモデル交換を可能にするよう設計されています。この相互運用性はディープラーニングだけでなく、従来型の機械学習モデルにも広がり、開発者は1つのエコシステムに縛られることなく多様なツールの強みを活用できます。
- 標準化: ONNXは共通の演算子とデータ型を含む統一フォーマットを提供します。この標準化により、モデルはプラットフォーム間で一貫して機能し、独自フォーマットに起因する互換性の問題を軽減します。
- コミュニティ主導: ONNXの成功と進化は、開発者や組織から成る活発なコミュニティに大きく支えられています。この協働によってONNXは定期的にアップデート・改善され、AIモデル展開のイノベーションが促進されています。
- ハードウェア最適化: ONNXは複数のハードウェアプラットフォームをサポートし、GPUやCPUなどさまざまなデバイスでのパフォーマンス向上のための最適化も提供します。これはリソースが限られた環境での展開や、本番システムでの推論時間短縮に重要です。
- バージョン管理と互換性: ONNXは後方互換性を維持しており、古いバージョンで作成されたモデルも新しい環境で問題なく動作します。これにより、機能やパフォーマンスを損なうことなくモデルを進化させることができます。
ONNXランタイム
ONNXランタイムはONNXモデルを実行する高性能エンジンであり、多様なハードウェアやプラットフォーム上で効率的な動作を保証します。さまざまな最適化や実行プロバイダーをサポートし、AIモデルの本番展開に不可欠な存在です。ONNXランタイムはPyTorch、TensorFlow、scikit-learnなどのフレームワークからのモデルと統合でき、グラフ最適化やハードウェアアクセラレータへのサブグラフ割り当てにより、元のフレームワークよりも優れたパフォーマンスを実現します。
ユースケースと事例
- 医療: 医用画像分野では、ONNXによってMRI画像での腫瘍検出など、さまざまな診断プラットフォームでディープラーニングモデルの展開が容易になります。
- 自動車: 自動運転車では、ONNXがリアルタイムな意思決定を支える物体検出モデルの統合に重要な役割を果たします。
- 小売: ONNXはeコマースでのレコメンデーションシステム展開を簡素化し、異なるフレームワークで学習したモデルを活用してパーソナライズされたショッピング体験を強化します。
- 製造: 予知保全モデルを1つのフレームワークで開発し、工場システムへONNXで展開することで運用効率が向上します。
- 金融: あるフレームワークで作成した不正検出モデルをONNXで銀行システムにシームレスに統合し、不正防止を強化できます。
- 農業: ONNXは作物や土壌モデルをさまざまな農業管理システムに統合し、精密農業を支えます。
- 教育: 適応型学習システムはONNXを活用して、多様な教育プラットフォームでパーソナライズされた学習体験を実現します。
ONNXと互換性のある代表的なフレームワーク
- PyTorch: 動的計算グラフと使いやすさで研究開発に広く採用されています。
- TensorFlow: Googleが開発した包括的なフレームワークで、機械学習モデルの構築と展開APIを提供します。
- Microsoft Cognitive Toolkit(CNTK): 音声・画像認識などのディープラーニングモデル学習に効率的です。
- Apache MXNet: Amazonが支援し、クラウドやモバイル環境での柔軟性と効率性が特徴です。
- Scikit-Learn: 従来型の機械学習アルゴリズムで人気があり、sklearn-onnxでONNX変換をサポートします。
- Keras: TensorFlow上で動作する高レベルAPIで、迅速な実験に特化しています。
- Apple Core ML: iOSアプリへのモデル統合を可能にし、ONNX変換もサポートしています。
ONNXを利用するメリット
- フレームワークの柔軟性: ONNXにより多様な機械学習フレームワーク間の切り替えが可能となり、モデル開発・展開の柔軟性が高まります。
- 展開効率: モデルを大きな修正なしにさまざまなプラットフォームやデバイスに展開できます。
- コミュニティと業界のサポート: 強力なコミュニティと業界の支援により、ONNXは継続的に進化し広く採用されています。
ONNX導入における課題
- 変換の複雑さ: カスタムレイヤーや演算子を含むモデルのONNX変換は複雑になる場合があります。
- バージョン互換性: ONNXや各フレームワークのバージョン間で互換性を維持するのが困難な場合があります。
- 独自演算子サポートの限定: 一部の高度な演算はONNXでサポートされていないことがあり、適用範囲が制限される場合があります。
ONNX(Open Neural Network Exchange)の理解
オープン・ニューラル・ネットワーク・エクスチェンジ(ONNX)は、異なる機械学習フレームワーク間でAIモデルの交換性を促進するために設計されたオープンソースフォーマットです。ディープラーニングモデルの統一的かつ移植可能な表現を提供し、多様なプラットフォームへのシームレスな展開を可能にする点でAIコミュニティで注目を集めています。以下は、ONNXの応用や開発に関連する主要な学術論文の概要です。
1. MLIRを用いたONNXニューラルネットワークモデルのコンパイル
- 著者: Tian Jin、Gheorghe-Teodor Bercea、Tung D. Le、Tong Chen、Gong Su、Haruki Imai、Yasushi Negishi、Anh Leu、Kevin O’Brien、Kiyokuni Kawachiya、Alexandre E. Eichenberger
- 概要: 本論文では、onnx-mlirコンパイラがONNXモデルをMulti-Level Intermediate Representation(MLIR)インフラストラクチャを用いて実行可能コードに変換する手法を紹介しています。著者らは、ONNXモデル推論の最適化のためにMLIR内で2つの新しい方言を導入しています。この研究は、さまざまな計算環境におけるモデルの可搬性と最適化の向上に重要な役割を果たします。
2. Sionnx: ONNXコンフォーマンスのための自動ユニットテスト生成器
- 著者: Xinli Cai、Peng Zhou、Shuhan Ding、Guoyang Chen、Weifeng Zhang
- 概要: 本論文は、さまざまな実装でのONNXオペレータの準拠性検証のためのユニットテストを自動生成するフレームワーク「Sionnx」を紹介しています。高レベルのオペレータ記述言語(OSL)を用いることで、Sionnxは包括的なテストカバレッジを確保し、堅牢なフレームワーク横断検証を実現します。このツールはONNXモデル実行の一貫性と信頼性を維持する上で重要です。
3. QONNX: 任意精度量子化ニューラルネットワークの表現
- 著者: Alessandro Pappalardo、Yaman Umuroglu、Michaela Blott、Jovan Mitrevski、Ben Hawks、Nhan Tran、Vladimir Loncar、Sioni Summers、Hendrik Borras、Jules Muhizi、Matthew Trahms、Shih-Chieh Hsu、Scott Hauck、Javier Duarte
- 概要: 本論文は、ONNXフォーマットを任意精度の量子化ニューラルネットワークに対応させる拡張について述べています。Quant、BipolarQuant、Truncなどの新たなオペレータをQuantized ONNX(QONNX)フォーマット内で導入し、低精度量子化の効率的な表現を可能にしています。この進歩により、さまざまな精度要件のハードウェアでのニューラルネットワーク展開がより効率的に行えるようになります。