非構造化データ

非構造化データには、テキスト、画像、センサーデータなど、あらかじめ決められた枠組みを持たないデータが含まれ、従来のツールでは管理や分析が困難です。

非構造化データとは?

非構造化データとは、あらかじめ決められたスキームや組織的な枠組みを持たない情報のことです。構造化データがデータベースやスプレッドシートの固定フィールドに格納されているのに対し、非構造化データは一般的にテキスト中心であり、日付や数値、事実など様々なデータタイプを含みます。

このような構造の欠如は、従来のデータ管理ツールでは収集・処理・分析が困難になる要因です。IDCは2025年までに世界のデータ量が175ゼタバイトに達し、そのうち80%が非構造化データになると予測しています。非構造化データの約90%は未分析のままで、「ダークデータ」と呼ばれることもあります。

非構造化データの特徴

  • あらかじめ決められた構造がない:データは固定スキーマに従わず、事前にカラムや行の構造を気にせず保存できます。この柔軟性がある一方で、整理や検索が複雑になります。
  • 多様な形式:テキスト文書、メール、画像、動画、音声ファイル、SNS投稿など幅広いデータタイプを含みます。各形式は豊富な文脈情報を持ち、位置や行動、ジェスチャー、感情などデータの詳細な背景を提供します。
  • 大量:今日生成されるデータの大半は非構造化データです。推計によれば、組織が生み出す全データの約80~90%を占めており、その処理・分析には高度なツールや技術が求められます。
  • 複雑性:分析には高度なアルゴリズムや多大な計算資源が必要であり、実用的な洞察を引き出すためにはAIや機械学習の活用が不可欠です。

非構造化データの例

テキストデータ

  • メール:個人やグループ間のやりとりで、添付ファイルやマルチメディアを含む場合もあります。メール分析により顧客のフィードバックや組織内のコミュニケーションパターンを把握できます。
  • ワープロ文書:Microsoft Wordなどで作成されたレポートやメモ。感情分析や内容の分類にも活用できます。
  • プレゼンテーション:PowerPointなどで作成されたスライドや資料は、ビジネス分析でよく使われます。
  • ウェブページ:ブログや記事など、ウェブサイトのコンテンツはトレンド把握や市場調査に役立ちます。
  • SNS投稿:Twitter、Facebook、LinkedInなどの投稿・コメント・メッセージは、感情分析やブランド監視に有用な情報源です。

マルチメディアデータ

  • 画像:JPEG、PNG、GIFなどの写真、グラフィック、イラスト。画像分析は顔認証や医療診断などの用途で重要です。
  • 音声ファイル:MP3やWAVなどの録音、音楽、ポッドキャスト。音声分析は音声認識やボイスアシスタントなどの応用を支えます。
  • 動画ファイル:MP4、AVI、MOVなどの録画やクリップは、監視や自動コンテンツ認識で使われています。

機械生成データ

  • センサーデータ:スマートフォンや産業機器、IoTデバイスのセンサーから取得される情報(温度、GPS座標、環境データなど)。予知保全や運用効率化に欠かせません。
  • ログファイル:ソフトウェアやシステムが生成するユーザーの操作履歴、システム性能、エラーなどの記録で、サイバーセキュリティや性能監視に重要です。

構造化データと非構造化データの違い

構造化データ非構造化データセミ構造化データ
定義あらかじめ定められたデータモデルに従い、検索しやすいデータ特定の形式や構造を持たないデータ厳密な構造には従わないが、タグやマーカーを持つデータ
特徴- 行と列に整理されている
- スキーマが決まっている
- SQLクエリで簡単にアクセス・分析できる
- あらかじめ決まった形で整理されていない
- 処理や分析に専用ツールが必要
- テキストやマルチメディア、SNSのやりとりなど豊富な内容を含む
- 組織的な属性を持つ
- XMLやJSONなどの形式を使用
- 構造化と非構造化の中間に位置する
- 金融取引
- 定義済みフィールドの顧客情報
- 在庫データ
- メールや文書
- SNS投稿
- 画像や動画
- メタデータ付きメール
- XML、JSONファイル
- NoSQLデータベース

非構造化データの活用法

非構造化データは、組織が洞察を得て意思決定を強化するうえで大きな可能性を秘めています。主な活用例を見てみましょう。

顧客分析

メールやSNS投稿、コールセンターの通話記録など、顧客とのやりとりに含まれる非構造化データを分析することで、顧客の感情や嗜好、行動を深く理解できます。これにより顧客体験の向上やターゲットを絞ったマーケティングが実現します。

ユースケース:
小売業者がSNS投稿やレビューを収集・分析し、新商品の顧客満足度を測定。それに基づいて商品ラインナップを調整します。

感情分析

感情分析は、非構造化テキストデータを処理し、言葉の背後にある感情を判別する技術です。世論の把握やブランド評価の監視、顧客対応の最適化に役立ちます。

ユースケース:
企業がツイートやブログ記事を監視し、広告キャンペーンへの反応を把握。リアルタイムで施策を調整します。

予知保全

センサーやログから得られる機械生成の非構造化データを分析することで、装置の故障を予測し、計画的なメンテナンスが可能になります。これによりダウンタイムやコスト削減を実現します。

ユースケース:
製造業者が機器のセンサーデータを用いて部品の故障時期を予測し、適切なタイミングで部品交換を実施します。

ビジネスインテリジェンスと分析

非構造化データは、組織のビジネスインテリジェンスを拡張し、より全体像に近い分析を実現します。構造化データと組み合わせることで、より深い洞察が得られます。

ユースケース:
金融機関が顧客のメールと取引データを分析し、不正取引の検出精度を高めます。

自然言語処理(NLP)と機械学習

NLPや機械学習などの高度な技術により、非構造化データから有用な情報を抽出できます。自動要約、翻訳、内容分類などのタスクを実現します。

ユースケース:
ニュースアグリゲーターがNLPを使って記事をトピック別に分類し、要約を自動生成します。

非構造化データの課題

保管と管理

  • ボリューム:膨大なデータ量へのスケーラブルな保存が必要です。
  • コスト:大量データの保存にはコストがかかるため、効率的な方法が求められます。
  • 整理:あらかじめ構造がないため、整理や検索が困難です。

処理と分析

  • 複雑性:分析には高度なアルゴリズムと大きな計算資源が必要です。
  • データ品質:誤りや重複、無関係な情報が含まれる場合があります。
  • スキル要件:ビッグデータ分析や機械学習、NLPに精通した専門家が必要です。

セキュリティとコンプライアンス

  • データセキュリティ:機密データの漏洩防止が重要です。
  • コンプライアンス:GDPRやHIPAAなどの規制に準拠したデータ取り扱いが求められ、管理が複雑化します。

非構造化データのための技術とツール

ストレージソリューション

  • NoSQLデータベース:MongoDBやCassandraなどは、非構造化・セミ構造化データに対応し、柔軟性とスケーラビリティを備えています。
  • データレイク:あらゆるデータタイプをネイティブ形式で保存でき、大規模分析に適しています。
  • クラウドストレージ:Amazon S3、Google Cloud Storage、Microsoft Azure Blob Storageなどがスケーラブルかつコスト効率の高い選択肢です。

データ処理基盤

  • Hadoop:分散処理を可能にするオープンソースのフレームワークで、大規模データセットをクラスタ上でシンプルに処理できます。
  • Apache Spark:インメモリ処理に対応し、高速かつ汎用的なクラスターコンピューティングシステムです。

分析ツール

  • テキスト分析およびNLP
    • 感情分析:テキストデータの感情トーンを評価するツール
    • エンティティ認識:テキスト内の重要な要素を特定・分類
    • 機械学習アルゴリズム:クラスタリングや分類など、パターン抽出や洞察発見のための技術
  • データマイニング:大量データから有用な情報や隠れたパターンを抽出します。

よくある質問

非構造化データとは何ですか?

非構造化データとは、あらかじめ決められたスキーマや組織的な枠組みを持たない情報であり、従来のデータ管理ツールでの保存や分析が困難です。テキスト、画像、音声、センサーデータなどの形式が含まれます。

非構造化データは構造化データとどう違いますか?

構造化データはデータベース内の固定フィールドに整理されており、検索や分析が容易です。一方、非構造化データはこのような整理がなく、多様な形式を持ち、処理や分析には高度なツールが必要です。

非構造化データの例を教えてください。

メール、ワープロ文書、プレゼンテーション、ウェブページ、SNS投稿、画像、音声ファイル、動画ファイル、センサーデータ、ログファイルなどが例です。

なぜ非構造化データは重要なのですか?

非構造化データは組織のデータの大部分を占めており、顧客分析、感情分析、予知保全、ビジネスインテリジェンスなどに役立つ貴重な洞察を含んでいます。

非構造化データの管理に使われるツールは何ですか?

一般的なツールには、NoSQLデータベース、データレイク、クラウドストレージ、HadoopやSparkなどのビッグデータ処理基盤、テキストマイニングやNLP、機械学習用の分析ツールがあります。

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